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READING ・ 音声入力のすすめ
VOICE #01 / 3

「きれいなプロンプト」より、音声で雑に喋るほうがいい

AIともっと上手に仕事をするための、音声入力のはじめ方(全3回・第1回)

「AIを使いこなすにはプロンプトが大事」——よく聞く話です。プロンプトというのは、AIに出す指示文のこと。私もずっとそう思っていました。でも最近、実はその逆かもしれない、と感じる出来事がありました。私はいまAIに指示を出すとき、文章を打ち込みません。音声で喋っています。頭の中にモヤっとあることを、整理しないまま声に出す。それだけなのに、出てくる成果物の質がむしろ上がったのです。

これは、AIともっと上手に仕事をしたい人みんなに効く話です。これからAIコーディング(自分でコードを書く代わりに、AIに指示して書いてもらうやり方)を始めようとしている人にも、そのまま当てはまります。

音声入力って、結局なにをしているのか

やっていることはシンプルです。頭の中にあるモヤモヤを、言葉にしてAIに渡す。ただそれだけ。キーボードで打つ代わりに、口で喋る。

ただ、この「口で喋る」がまだあまり広まっていません。AIに向かって話しかける人を、私はほとんど見たことがない。だからこそ、ここに差が出ると感じています。

実は、プロンプトはきれいにしなくていい

先に言っておくと、「プロンプトが大事」という話は、決して間違いではありません。ただ、多くの場合、AIに一回だけ質問して答えをもらう使い方——たとえばChatGPTに、その場で一度きり聞くような場面——を前提にしています。相手がこちらの事情を何も知らない状態から、いきなり正解を出させる。だからこそ、必要な背景をすべて言葉にして詰め込んだ、よく練られたプロンプトが効きます。一回で決めるなら、整えて渡したほうがいい。これは本当です。

変わるのは、同じAIと日常的に仕事をするようになってからです。相手はこちらの過去のやりとりや資料を踏まえてくれる。分からなければ聞き返してくれる。こちらの喋りが多少散らかっていても、意図を汲んでくれる。

この状態だと、わざわざきれいなプロンプトに整える労力の見返りが、驚くほど小さくなります。整えなくても伝わるからです。

いちばん目から鱗だったこと

これが本題です。そしてこの気づきは、実は私がAIに直接聞いたことから来ています。私はあるとき、こう質問しました。

「いまは思いついたことを音声でそのまま話しているけれど、一度プロンプトの形に整えてから渡したほうが、成果物の質は上がりますか?」

返ってきた答えは、意外なものでした。

「整える必要はありません。むしろ、整えると一番大事な"なぜ"が抜け落ちます。あなたのように、思ったまま喋って渡すほうが向いています」

理由はこうです。文章を整えようとするとき、人は無意識に「要約」します。そして要約とは、結論を残して理由を捨てる作業です。ところが、AIに一番渡したいのは、その捨てられがちな「なぜやりたいのか」の部分なんです。だから、整えずに生のまま喋ったほうが、精度が上がる。

ためしに、同じ依頼を2通りで渡してみた

自社サイトの改善案をAIに頼んだときの話です。まず、きれいに整えたプロンプト版はこうでした。

「自社サイトのトップページについて、コンバージョン率を上げる改善案を、SEO・UX・コピーの観点から優先度をつけて提案してください。」

一見よくできた指示です。でも返ってきたのは、どのサイトにも当てはまる一般論でした。悪くはないけれど、刺さらない。次に、同じ依頼を音声で雑に喋りました。

「うちさ、サイト診断のツールを作ってて。試しに自社サイトを診断したら点が低くて焦ったんだけど。で、これ直したいんだよね。ただ直すだけじゃなくて、直す過程そのものを商品のデモに使いたい。だから、ビフォーアフターが数字で見える形で進めたくて…」

文章としては散らかっています。でもこの中に、「なぜ直すのか」「どう見せたいか」という、きれいな版では消えていた情報が全部入っている。返ってきた案は、私の狙いにぴったり沿ったものでした。差を生んだのは、プロンプトの美しさではなく、捨てなかった「なぜ」です。

そもそも、なぜ雑に喋っていいのか

散らかった話を延々と聞かせても許される相手は、AIくらいだ、ということです。人間相手にこれをやったら、たいてい失礼です。まとまってから話せ、と思われる。だから私たちは、話す前に整える癖がついている。

でもAIは疲れません。急かしもしないし、何度言い直しても嫌な顔をしない。だからこそ、こちらは遠慮なく散らかせる。整える前の、いちばん情報量の多い状態のまま渡せる。この「相手がAIだからこそ雑でいい」という非対称さが、音声入力の効きどころです。

喋りながら、考えがまとまっていく

音声にはおまけの効果もあります。喋っているうちに、自分の考え自体が整理されていくんです。キーボードだと、書く前にある程度まとまっていないと打てません。でも声なら、まとまっていないまま出せる。「えーっと、つまりこれがやりたくて、いや違うな、本当はこっちか」と、思考の途中経過ごと渡せる。AIとの対話が、そのまま自分の頭を整理する壁打ちになります。書くより速く、情報量も多い。

「話すの、ちょっと恥ずかしい」について

たぶん、多くの人が始めない一番の理由はこれです。パソコンに向かって独り言のように喋るのは、最初はどうしても照れくさい。でも、ここで求められている「話す」は、人前でのプレゼンとは違います。うまく話す必要はありません。つっかえながら、言い直しながらで構わない。その言い直しごと、AIは受け取ってくれます。最初の数回の照れくささを越えれば、あとは普通の作業になります。

始め方は、びっくりするほど簡単

特別な準備はいりません。パソコンには音声入力の機能が最初から入っていますし、精度の高い専用のアプリもあります(どれを使っているかは第3回で紹介します)。まずは、いま抱えている用件を一つ、整えずにそのまま喋ってみる。それだけで十分です。

今日のまとめ

  • 一発勝負のChatGPTなら、練ったプロンプトが効く。日常的に組むAIなら、音声で雑に喋るほうがいい
  • 整えると、一番大事な「なぜ」が抜け落ちる。生のまま渡すほうが精度が上がる
  • 意図と素材を、散らかったまま多めに渡す。整える作業はAIに任せる

ちなみに——「なぜAIはこちらの文脈を分かってくれるのか」。その正体は、次回の「第二の脳」の話につながります。

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